手技療法とは
手技療法とは、医療やリハビリテーションの分野で一般的に使われている治療法の一つです。文字通り、セラピストの手を使って行われる技術や手法全般を指します。
手技療法は、単純にもみほぐしなどでもある程度の効果を得ることは可能ですが、より効果を出すためには身体の解剖学・生理学的な働きや機能を理解しておくことが必要になります。
同じようなことを行なっているように見えても、解剖学や生理学、解剖学をさらに踏み込んだ機能解剖学の理解の深さによって全く結果が変わってくるので、セラピストとしては腕の見せどころです。
手技療法の種類は多岐にわたりますが、代表的なものには以下のようなものがあります:
- マッサージ療法: 筋肉や組織の緊張をほぐし、血液循環を改善し、リラクゼーションを促進するために行われます。身体の押し方、伸ばし方、叩き方によって身体の生理学的な反応が違うため、ただ押すだけではなく、身体に備わっているどの反射を使うかという目的と、手技を用いて身体に入力する信号が合っている必要があります。
- 整体療法: 骨格や関節の調整を行い、身体のバランスを整え、痛みや不快感を軽減します。解剖学や、身体のつながりを考慮した機能解剖学の理解が深いと、患者さんがより効果を感じられる施術が行えます。一般的な整体やカイロプラクティックなどがこれに当たります。当院での整体はゴキゴキやるというよりは、身体をしっかり伸ばしたり筋肉の生理学的な作用を用いるPNFを応用したものが多いです。
- マニュアルセラピー: 関節や筋肉、神経組織に対して、特定の手技を用いて治療を行います。オステオパシーなどがこれに当たりますが、オステオパシーだけではなく頭蓋仙骨療法や関節調律なども含まれます。
- リンパドレナージュ: リンパ液の流れを促進し、浮腫やむくみの緩和、免疫機能の向上を目的として行われます。浮腫などはそれだけで血流の悪化に繋がり、冷えや筋肉の緊張の原因となります。当院では、徒手で行うだけではなく、ラジオ波などの業務用機器も使ってより効果的な方法で行っています。
- ストレッチング: 筋肉の柔軟性を向上させ、運動機能や姿勢の改善を図ります。一人で行うストレッチングよりも、施術者と一緒に行うストレッチングはより効果を実感できると思います。上でご紹介したPNFも、厳密にはストレッチングに当たりますが、この辺りの区別は曖昧かもしれませんね。
これらの手技療法は、患者さんの症状に合わせて最も効果的と考えられるものを選択します。
手技療法の特徴
鍼灸と比べると、手技療法は以下のような特徴があると考えています。
- 非侵襲性: 手技療法は外科手術や薬物治療、そして鍼灸などのような侵襲的な治療法ではなく、治療者の手を使用して行われます。そのため、鍼が怖いと感じている人にとっては人気です。
ただ、実際に痛みはというと、筋緊張が強い方や症状が重い方は手技療法であっても痛みが強く出やすく、むしろ鍼の方が痛くないかもしれません。 - 個別化されたアプローチ: 患者の状態や症状に合わせて方法を選ぶことで、効果的な治療が提供できます。そのため、たとえ同じ症状であったとしても、AさんとBさんでは行う内容が違います。また、同じAさんでも日によって、あるいは筋肉の状態によっては別のアプローチを行うこともあります。その日の状態に基づいて最適な手技や手法を選択しています。
- 総合的なアプローチ: 手技療法は、単関節の症状や問題だけでなく、他関節の連携が必要となる運動連鎖を改善させることができます。鍼灸との違いは、その時その時でリアルタイムに変化する身体の状態に対して対応しやすいことも挙げられます。身体の総合的なアプローチをとることで症状の根本的な原因や全体的な健康状態を向上させることができます。身体の機能や動きの改善を通じて、患者さんの全体的な健康とウェルビーイングを向上させることが可能です。
- 痛みの管理: 多くの手技療法は、痛みや不快感の軽減に効果的であり、痛み管理やリハビリテーションの一部として使用されています。マッサージ、整体、ストレッチングなどの手技は、緊張した筋肉をほぐしたり、関節の動きを改善することで、痛みの軽減を実現しています。
手技療法は、鍼が怖いという患者さんにとっては健康管理に役立つ治療法です。
手技療法の効果
手技療法の効果は、身体に入れる信号によって効果が異なります。基本的には、筋肉をほぐす、緩める、伸ばすなどの効果がある信号入力を行いますが、筋肉を締める、収縮させるといった方法や、施術で信号を入れる筋肉と対になってセットで働く筋肉を緩めるという信号入力を行う場合もあります。
たとえば、手技療法では「1b抑制」という生理学的な反応を使うことが多いです。
「1b抑制」は、神経系の一部である「1b受容器」を介して筋肉の活動を制御する神経伝達物質の抑制を指します。1b受容器は、筋肉や腱などの組織に存在し、運動中に発生する筋収縮を調節しています。
筋収縮は運動を行う際に神経系からの刺激によって引き起こされますが、通常では、筋肉の収縮が過度に強い場合や適切な制御が必要な場合には、1b受容器を介して抑制が働きます。
具体的には、筋収縮時に筋肉の伸張が起こると、1b受容器が刺激され、その情報が脊髄を介して中枢神経系に伝えられます。中枢神経系はこの情報を受け取り、必要に応じて筋肉の収縮を抑制する信号を送ることがあります。これによって、筋肉の過剰な収縮や緊張が緩和され、運動の効率性や安定性が向上します。
1b抑制は、運動制御や姿勢維持、運動の柔軟性の維持など、体の機能に重要な役割を果たしています。また、1b抑制の働きが低下することが、筋肉の過剰な緊張や運動障害などの症状を引き起こす要因の一つとされています。
この1b抑制を、押圧刺激で入力することで筋肉を緩めるといった効果を得ることができるのです。
徒手療法ではこのように、生理学的反応を使って刺激を行っています。
行う刺激方法
が全て一致しておく必要もあります。
徒手療法の対象疾患
徒手療法の対象疾患は以下のとおりです。
整形外科疾患全般
- 変形性頚椎症
- 頚椎症性神経根症
- 頚椎症性脊髄症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 肩関節周囲炎
- 四十肩、五十肩
- 腱板損傷
- アキレス腱炎
- 足底筋膜炎
- 踵部脂肪体障害
- 蜂窩織炎
- 頸椎捻挫後遺症(ムチウチ)
- 腰椎捻挫
- 手足の痺れ
- 膝関節痛
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 股関節痛
- 変形性股関節症
- 臼蓋形成不全
- 股関節インピンジメント
- 先天性股関節脱臼
- オスグッド・シュラッター病
- シンスプリント
- ジャンパー膝
- タナ障害
- 野球肩
- 野球肘
- 水泳肩
- テニス肘
- ばね指
- ガングリオン
- 腱鞘炎
- ドケルバン症候群
- へバーデン結節
整形外科疾患以外の症状
- パーキンソン病
- 多系統萎縮症
- バセドウ病
- 橋本病
- スティッフパーソン症候群
- 関節リウマチ
- 膠原病
- シェーグレン症候群
- メニエール病
- めまい発作
- 良性発作性頭位めまい症
- 動悸
- 頭痛
- 自律神経失調症
- 不安神経症
- 不安・抑うつ
- コロナ感染後遺症
基本的には鍼灸院で出会うほぼ全ての症状に対して対応することができると思います。
ただ、鍼灸を使った場合と手技療法だけで施術を行った場合では当然、効果が異なりますので、効果を求めるか、それでも鍼灸を避けるか、もしくは鍼灸ではなく手技療法の方が良いのかについては相談しながらの施術とさせてくださいね。
当院での手技療法
当院では鍼灸が苦手という方に対しては手技療法のみでの対応もさせていただいております。整体、マッサージ、オステオパシー、PNFなど、あらゆる手技療法でお悩みの改善に努めさせていただきますので、鍼灸が苦手という方でも是非、ご相談くださいませ。
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