多系統萎縮症とは?
多系統萎縮症とは、大脳、小脳、脳幹、脊髄などの脳の大切な部分が障害を受けることで発症する病気です。
脊髄小脳変性症と呼ばれる疾患の一部で、症状は障害される部位によって異なります。
多くは小脳の障害に応じての歩行障害から発症が発覚し、歩くときにフラフラする、足が痺れて上手く歩けない、自転車に乗ろうとしたらバランスが取れないなど、平衡感覚の異常などで病院を受診し、病気が発覚します。
多系統萎縮症患者さんの多くは遺伝性ではありません。身内、ご家族には同じような病気の人はいないけれど病気が発症してしまいます。このような状態を孤発性と呼びます。
以前は症状に合わせて
- 線条体黒質変性症
- オリーブ橋小脳委縮症
- シャイドレーガー症候群
と、大きく3つに分類されています。
現在では、いずれも病理学的には同じ特徴を有していることから一つの疾病概念として捉えられています。
多系統萎縮症の症状は?
多系統萎縮症の症状は、小脳の障害からくるふらつきや歩行障害から発症することが多いのが特徴です。
小脳は筋肉の細かな動作を調節している器官であるため、バランスを取る、手が震える、細かな作業が苦手になる、字が書けなくなるなどの症状が現れます。
両足をそろえた状態で立つことも難しくなるため、足を広げて歩くようになります。
喋り方も変わってきます。
呂律が回らない、喋り方がゆっくりになるなどの症状が現れてきます。
脊髄に障害が現れるようになると、自律神経系の症状が現れ始めます。汗の調節ができない、血圧の調節ができない、立ちくらみ、排尿障害、頻尿などが挙げられます。
さらに大脳や脳幹に関連した症状ではパーキンソニズムと呼ばれる、パーキンソン病に似たような症状が現れます。
具体的には、歩幅が狭くなる、動作が遅くなる、表情が乏しくなる、手足をコントロールできなくなるなどの症状や嚥下障害、手足のつっぱりなどで、数年かけて悪化すると言われています。
多系統萎縮症の原因は?
多系統萎縮症の原因の一つと考えられているものに、αシヌクレインと呼ばれる異常タンパク質の蓄積が挙げられます。
多系統萎縮症だけでなく、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患では、このαシヌクレインの蓄積で発症すると考えられており、蓄積部分によって症状や病名が異なります。
αシヌクレインが海馬領域など記憶に関わる部分に生じるとアルツハイマー病やレビー小体型認知症、小脳に蓄積すると脊髄小脳変性症、小脳、中小脳脚(中脳と小脳をつなぐ部分)、脳幹(生命の中枢を司る部位で、黒質、オリーブ核などにより形成されている)、大脳基底核、大脳(特に運動野)など、自律神経に関連する各部位など幅広い部分で蓄積が起きると多系統萎縮症が発症します。
αシヌクレインは脳の神経の中に異常な架橋構造を作ります。脳神経はニューロンと呼ばれる神経細胞でネットワーク構造を作っています。αシヌクレインが作る架橋構造がニューロンの中で電気信号にぶつかることにより、脳の電気信号の正常な伝達を妨げてしまいます。
その結果、脳神経が正常に機能しなくなり、各症状が発症することになります。
αシヌクレインは体内でエネルギーを作り出すミトコンドリアが老化や遺伝子のコピーミスによって劣化することにより、エネルギーを作り出した際に老廃物として作られます。
多系統萎縮症と検査・診断するには?
現在、多系統萎縮症では、頭部MRIを行い病変部位の萎縮性変化を含めた病変をみます。多系統萎縮症に特徴的なMRIの所見が診断に重要です。
また脳の血流や代謝が低下することから、SPECT、PETと呼ばれる検査が行われます。多系統萎縮症ではSPECTで血流低下が、PETで代謝の低下がそれぞれ確認されます。
そのほかにも、神経系の働きを確認する検査が行われる場合もあります。
多系統萎縮症では自律神経機能異常が生じることがあります。ヘッドアップチルト検査を通して、体位に応じた血圧の調整がうまくいかないことを確認します。
また、心電図検査、膀胱自律神経検査、サーモグラフィーなど自律神経機能を確認するための様々な検査が行われることがあります。
今後のことになりますが、2022年、エーザイと小野薬品がαシヌクレインを測定する方法を発表し、その方法が今後の検査の精度や治療に期待が持たれています。
多系統萎縮症の治療は?
残念ながら、2024年現在において、多系統萎縮症に対する根本的な治療法は確立されていません。
さまざまな症状が現れるため対症療法に頼ることとなり、西洋医学の投薬を中心に据えつつサプリメントやリハビリテーション、鍼灸などあらゆる選択肢で各種症状に対して対応する必要があります。
パーキンソニズムに対してはパーキンソン病に使用するお薬が有効なこともあるようですが、時間経過とともに効果が薄くなってきます。
多系統萎縮症の治療においては、投薬以上にリハビリテーションで残存する筋肉を保持することで転倒予防や筋力での症状の抑え込みに期待が持たれています。
残存する筋肉を維持することで転倒リスクが減ったり、家に籠ることを防ぎ生活の質が維持できます。
鍼灸などもこのときに役立ちます。
鍼灸は、自律神経系の安定、筋肉の緊張を緩和することにより筋肉のコントロールがしやすくなる、頭皮に刺激を入れることにより脳血流の増加や脳神経の興奮を促すなどの目的で行われます。
多系統萎縮症治療の注意事項
鍼灸治療を導入する際の注意事項、というよりは多系統萎縮症治療の注意事項として、何か単独の方法には頼らないことです。
我々医療従事者は、新しい治療法がもうすぐそこまで来ていると実感しています。
そのため、どんな手段を使ってでも生活の質を維持し、今の活動量を保たなければいけません。
恐らくですが、今後、多系統萎縮症の新薬が出てくるとなった時、最初に効果が認められるお薬はαシヌクレインの除去薬になるだろうと予想しています。
このαシヌクレインの除去薬の特徴は、治療を開始した時点で病気の進行をストップさせてくれる。という効果です。
そのため、もし新薬ができたとしてもADLが低下してしまっており、寝たきり状態になっていたとしたら、病気の進行がストップしたとしても生活は大変になるでしょう。
いつも患者さんにお伝えしていますが、ADLを高いレベルに保ち、症状はあるけれど進行をできるだけ抑制しておくことで、未来に希望をつなぐことができます。
そのためにあらゆる手段を使って、病気の進行を抑制しておく必要があります。
良く、『これから〇〇という方法を試してみるので今やっている治療をやめます!』と言われる患者さんがいらっしゃいますが、これは悪手だと思います。
西洋医学、東洋医学、サプリメント、その他の療法、自分に試すことができるあらゆる手段を使って、病気の進行を抑制し、ご自身、あるいはご家族の未来を守っていただきたいと思っています。
多系統萎縮症の方は是非当院にお任せください!
多系統萎縮症と診断され、『何とか生活の質を保ちたい』とお考えの方は是非当院にご相談ください!
当院では、多系統萎縮症の各種症状に対してM-Test、YNSA®︎などといった海外でも評価されているメイドインジャパンの鍼灸治療の他、整体、マッサージ、ストレッチなどあらゆる手段を組み合わせて治療を行っています。
また、お身体の状態やかかりつけ医のご判断次第では、保険を使った訪問施術も可能です。
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