徒手検査とは
徒手検査は理学検査とも呼ばれる、その名の通り徒手による検査法です。レントゲンやMRIでは確認できないような、筋力や可動域、動作時の痛みなどを確認することができます。
徒手検査は世界共通で、患者さんの症状によって選択される検査内容が違ってきます。
多種多様な検査法があり、このテストで陽性であれば整形外科的原因はこれだろうと、患者さんの状態を予測することができます。
言葉遊びになりますが、徒手検査法を使って患者さんの状態を『診断』できるのは医師のみで、病院内でも理学療法士や作業療法士は徒手検査を使った『診断』はできません。
鍼灸師や柔道整復師など、治療院の先生も同じで、徒手検査で行うことができるのは『判断』、もしくは『推察』ということになっています。
徒手検査の目的と概要
整形外科やスポーツの現場など、お医者さんや理学療法士さんが活躍する場所での徒手検査は症状の原因や身体の中での損傷の場所などを特定するために重要な検査になっています。
そして、我々鍼灸師が務める鍼灸院では、症状の原因や損傷箇所の特定だけではなく、関節の連携がうまく取れているかどうかや、病院で検査をするであろう部位以外が患部に影響を及ぼしていないかどうかなどの評価も行います。
というわけで徒手検査の目的は、病院、治療院共通で、レントゲンやMRIでの検査以外の情報を得ることになっています。
徒手検査には色々と種類があり、例えば徒手筋力検査(Manuel muscle test=MMT)と呼ばれる検査では個々の筋力が低下していないかどうか、低下しているのであればどの程度か、介助や介護が必要な方に対してはどの程度の補助が必要になるのかなどを検査することができます。
筋力の低下は、加齢などからくるサルコペニア(筋肉量の減少)以外にも、筋の炎症や損傷などが原因で一時的に生じるものなども評価の対象です。
肩が痛い時には洗濯物を干すのが辛かったり、ぎっくり腰になってしまった直後には力が入らなくて重いものが持てないことがありますよね?
あれは、筋の炎症などで筋出力が上がらず、一時的な筋力低下が起きている状態です。
MMTでは、このような筋単独の状態異常を図ることができる他、筋力低下が起きている筋肉の支配神経を覚えていれば、ヘルニアや神経の損傷など、背骨のどのレベルで問題が起きているかなどを推察することもできます。
それに対して、関節可動域を測定するROMと呼ばれるものがあります。
ROMは身体の関節が障害を起こさず生理的に運動できる範囲や角度を示す用語です。
ROM測定は関節の動きを妨げている原因を探ったり、損傷や障害の程度を測定したり、適切な治療法を決定する参考にしたり、治療やリハビリの成果を確認するために評価することが多いです。
ただし、単関節(肘なら肘、腰なら腰)の動きの評価に限定していることが多く、教科書的にROMを用いるだけでは、症状の原因を完璧に探ることは難しいかと思います。
さらに、徒手検査には個別に名前のついているテストも存在します。私は中学生の頃、膝の前十字靭帯を痛めたことがあるのですが、この時に医師から受けたテストは『前方引き出し』と呼ばれるテストでしたし、同じく前十字靭帯の状態を評価する方法には『ラックマンテスト』と呼ばれるテストがあります。
同じく膝の状態の評価法になりますが、『マクマレーテスト』になってくると半月板損傷の有無を調べるテストになってきます。
このように、患部の状態を絞り込み、色んな角度から『痛みの原因を探ること』を行うことができます。
さて、通常であればここまで徒手検査が行えればかなりの情報を得ることができるのですが、逆に言うと病院でレントゲンやMRI、リハビリでの評価の中で得られる情報とほとんど変わりません。ですので、当院ではもっと踏み込んで検査を行なっています。
当院での徒手検査方法と評価のポイント
当院では、徒手検査の際に2つのポイントを評価基準に加えています。
1つ目は、『多関節の連携(運動連鎖)の不具合が原因でROMの結果が低くなっていないか』
2つ目は、『ROM低下の原因筋が、教科書的な筋肉通りか否か』です。
そんなことがわかるのか?と、医療従事者から聞かれることがあるのですが、実は小野は大学院の頃、スポーツ医学研究室でROMと動作解析と運動連鎖をテーマに研究を行なってきました。
その結果を発表しなかったため各方面から怒られたのですが、その成果の一部をお伝えすると↓のような結果になっています。
パトリックテスト
【通常】股関節、仙腸関節、および腰椎の障害を評価するために行われるテスト
【運動連鎖を考えると】膝関節の回旋が関与し、下腿や大腿部の筋肉が正常に働いているか否かを評価できる
股関節のROM
【通常】股関節周囲の筋肉の柔軟性の評価
【運動連鎖を考えると】足関節までを含む下肢筋群の柔軟性が影響し、例えば足関節のストレッチを行なった後では可動域が10%〜15%程度変化するため、股関節のROM単独で股関節の状態を評価することは非常に危険
などとなっています。
当院ではこのように、徒手検査から得られる情報をできるだけ多く把握し、患者様のお悩みの原因はどこなのか、お悩みの原因はわかったので、原因の原因は何なのか、原因の原因の原因は・・・といった風に、もうこれ以上の原因は辿れない。というところまで深掘りした上で施術を行なっています。
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