インピンジメントリリース③ 基盤となったM-Test

インピンジメントリリース③ 基盤となったM-Test

おるき独自の治療法『インピンジメントリリース』−基盤となった技術〜M-Test〜−

基盤となった技術〜M-Test〜

インピンジメントリリースの基盤となった技術は、何度も出てきているM-Testという新旧のテクニックです。

私が鍼灸の世界で生きていくために学んだ方法であり、『この方法を学べばこんな自分でも患者さんの役に立てるかもしれない・・・』

そう思わせてくれた技術ですので、まずはM-Testについて紹介する必要があります。

とはいえ、M-TestはM-Test研究会がセミナー等で教えている方法で、私もインストラクターマスターとして活動させていただいておりますが、上の許可なく教えることもできませんので紹介だけさせていただきます。

M-Testとは

M-Testは、福岡大学名誉教授の向野義人医学博士によって考案された診断治療法です。向野先生は医師でありながら、鍼灸を患者さんの治療に使われる珍しい先生です。

M-Testの特徴は『経絡に負荷をかける身体の動き』を検査し、症状の出方によって身体の治すべきポイントを明確に見つけられる治療法であるということです。

患者さんも、治療する側である施術師も、どうしても痛みや眩暈などの悩みがあるところに意識が集中しがちです。

例えば腰痛。腰に治療したくなったり、骨盤矯正などをしてみたくなりますが、M-Testでは下半身の治療から始めます。

向野先生がM-Test発見のきっかけとなった症例のことを話しましょう。

向野先生は医師としての顔の他に、福岡大学スポーツ科学部の教授という顔も持たれていました。

福岡大学スポーツ科学部はスポーツの強豪で、中にはオリンピック選手や日本代表になった学生もいます。

ある日、バレーボール部の女の子が『肩が痛い』と言って向野先生の研究室を訪ねてきました。

肩をあちこち治療してもなかなか痛みが取れず、困ってあちこちツボを触っていると、足首にあるツボを押さえた時に異常に痛がっていたのでそのポイントに治療をしたところ『あれ?肩も痛くないかも?』と言い出したのです。

研究室は体育館の真横にあったため、治療後すぐにスパイクを打ってもらうと痛みが引いていました。

さて、この足首のツボですが、『胆経』という経絡に属するツボで、この胆経は足先から足首、足の外側面、体幹の脇、肩の前を通って顔面まで続いている経絡です。

この選手の痛みを遡ってみると、痛みが出る直前、ブロックの際に転倒して足首をぶつけたことがわかりました。

そして、そのぶつけた箇所の動きが悪くなり、胆経全体の動きの異常となって肩の動きに制限をかけたのだと、わかったのです。

当時、向野先生はこのような症例を数多く経験し、その経験から経絡テスト(のちのM-Test)を見つけ出されました。

M-Testはこのように、患者さんの症状がある局所だけをみるのではなく、身体全体の動きや些細な異常を見つけ、施術によって動作などの改善を図り、効率よく痛みやその他の悩みを取り除くという特徴を持っています。

M-Testの対象疾患

M-Testの対象疾患は『身体の動き』を診ることから整形外科疾患だと思われがちですが、その他にもめまいや頭痛などの自律神経症状、パーキンソン病やスティッフパーソン症候群、多系統萎縮症などの難病、不眠、うつなどの精神科疾患など多岐に及びます。

意外にも、めまいなどは特定の動作で誘発されることが多く、その動作自体をM-Testで改善してしまえば驚くほど症状が軽くなることがプライマリケア医を中心に報告されています。

世界に広がるM-Test

新型コロナをきっかけに自粛ムードが広がる前、M-Testは確実に福岡から世界に広がろうとしていました。向野先生は日本だけでなくフランス、ドバイ、アメリカ、イギリス、韓国など多くの国に招待され講演をされていましたし、M-Testの団体として日本のM-Test研究会だけでなく、M-Test America、M-Test France、M-Test Koreaなど海外団体も立ち上がっていました。

コロナ後は向野先生の体力の問題と、自粛期間にセミナー活動が減ってしまったことによる影響が大きく、活動は縮小傾向にありますが、世界に認知されたこの方法は日本よりも予防医学先進国である海外で広がっています。

M-Testのこれから

M-Testはこれからどうなるのか、実はインストラクターをしている我々もわかっていません。ただ、向野先生がお元気な間にもう少し、M-Testをしっかり根付かせたいという思いも強く持っています。

M-Testとインピンジメントリリース

本章の最後に、M-Testとインピンジメントリリースについての関係性について記載しておきます。

M-Testとインピンジメントリリースは、公式には関連性のない治療法です。しかし、小野がM-Testを使って丁寧に丁寧に施術をした結果たどり着いたということは間違いありません。

先日のブログでも記載した通り、M-Testは非常に時間がかかる治療法です。丁寧と言えば丁寧なのですが、検査項目が多いため、時間が限られた治療院での施術ではなかなか一筋縄ではいきません。

そのため、M-Testが得意としていた経絡への負荷テストを極限まで絞り、解剖学や機能解剖学の考え方を取り入れて効率化を図ったのが小野がまとめたインピンジメントリリースです。

インピンジメントリリースは、M-Testの良さである全身の状態把握だけでなく、関節の役割や運動連鎖を効率よく改善することが出来ます。

より現代医学の良さを取り入れ、効率化を図ったこの方法はM-Testの強化版と考えています。
※向野先生はもう少し、東洋医学の面白さをふんだんに取り入れた形式で進化させてほしかったようですが・・・そこは他のインストラクターの先生の今後の発見に期待したいと思います。

時間が限られている場合や解剖学を重視して再現性のある治療を素早く行いたい場合はインピンジメントリリース、丁寧に全身を評価して東洋医学の良さを生かした治療をしたい場合はM-Testと使い分けることで、幅広い治療を実現できます。

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