インピンジメントリリース② 技術作成の背景

インピンジメントリリース② 技術制作の背景

おるき独自の治療法『インピンジメントリリース』−技術制作の背景−

鍼灸に絶望していた学生時代とM-Testとの出会い

院長あいさつのページでも記載しましたが、私は元々、鍼灸に対してあまり良い印象を持っていない人間の一人でした。

中学生の頃、膝を怪我した時に初めて鍼灸を受け逆に辛くなったことや、大学時代、大学近くの鍼灸院に見学に行った時にもあまり良い結果を見てこなかったために、『このまま鍼灸師になって良いのか?』と悩んでいる時期がありました。

その悩みを払拭してくれたのが、本格的に私が学んだ最初の技術である『M-Test』です。

M-Testは、福岡大学名誉教授の向野義人医学博士が作り上げた技術で、最初は『経絡テスト』とも呼ばれていました。

本が英訳され、アメリカやヨーロッパでも広がりを見せてきたため研究会が発足し、その時に経絡テストはより広い視点と東洋医学の原理を組み込まれ『M-Test』に名前を変えましたが、発表当時は『身体の動き』で『今の身体の状態を正確に把握できる方法』として、画期的な方法の一つとして注目されていました。

M-Testの特徴は、『経絡を伸ばす動き』で身体状態のチェックを行い、どの動きが悪いか、どんな動きを行うことで症状が誘発されるのかを確認し、その動きの悪さで正確に今の身体状態がわかるというものです。

これは、東洋医学の概念と西洋医学の概念を、『身体の動き』という誰にもわかりやすい基準を使って結びつける革新的な方法でした。

M-Testが普及することで、東洋医学と西洋医学の垣根を越え、我々鍼灸師と医師や理学療法士、作業療法士などの西洋医学のコメディカル、果ては医学用語がわからない患者さんまで病気の原因を共有することができるだけでなく、『この動き』を良くすることで身体の状態を改善できるという治療方針の共有までが可能になります。

かつて、『膝が痛い』と言って鍼灸院にかかり『太陽の脈が弱いから君の身体は問題があったし、治療後は太陽の脈が元気になっているのだから君の身体は健康なんだ!』と怒られた私にとっては、目から鱗がボロボロと剥がれ落ちるように感動した方法でした。

そして、M-Testを学び、インストラクターとしてM-Testの普及を目指した私に、もう一つ試練がやってきました。

講師を行う中で直面したM-Test普及の障害

M-Testはわかりやすく、実際の施術で使っていても本当に効果を感じられる方法です。

ただ、一つ欠点があり、身体の動きをチェックするのに時間がかかりすぎることでした。

全身を30項目の動きでチェックするため、慣れるまではチェックだけで10分程度もかかってしまう先生が続出しました。

鍼灸院は時間制にしているところが多く、30分や45分という時間で区切られた施術時間の10分をチェックだけに使うには相当な勇気が必要です。

そのため、チェックを不十分に行なったために身体のどこから手をつけたら良いかがわからないという先生が予想以上に続出してしまいました。

M-Testの所見用紙
30項目の動きをチェックすることで
どこの経絡が悪くなっているのかが簡単に評価できる

我々インストラクターは、向野先生が大学病院の外来診療でM-Testの施術を行われている様子をかなりの期間見てきました。

そしてその中で、施術のポイントや時間短縮のコツ、肩が痛い患者さんでも足や背中に施術をすることでちゃんと変化が出るというリアルな情報を手に入れてきたため、このフローチャートに沿って施術を行うことがどれだけ早く結果に結びつくかを明確に理解しています。

しかし、M-Testを初めて学んだ先生や、練習をしっかりできる環境にない先生はどうしても、この30項目の動きをチェックすること自体が怖くなり、M-Testの施術が上達しないのです。

インストラクターをやっていた私のところには、なかなか上達しないという悩みを抱えた先生方の声と、もっとフォローをして欲しいという声がたくさん届くようになりました。

確かに、実際に施術をしていて時間に追われるという気持ちはわかります。もっと余裕を持って施術できれば、もっと患者さんをよくできるのに。そう思うこともたくさんあります。

願わくば、一人の患者さんを無限の時間をかけて治療したいとまで思います。

だから、開業3年目頃から少しずつ、技術をまとめ始めました。

どうやれば時間短縮ができた上で治療成績を落とさないか、より治療成績をアップさせた上でわかりやすい技術にするためにはどうすれば良いか、試行錯誤し、実際に患者さんに試した上で技術をまとめていきました。

M-Testの素晴らしさを知っている私にとっては、すべての先生にM-Testも学んでいただきたいと思っています。ただ、実際に限られた時間の中で施術するには最初の1歩が大変なのも事実です。そのため、M-Testを知る最初の一歩として、より簡単に治療に導入できる方法を作り出したくて頑張ってきました。

M-Testは非常に面白くて、インストラクターの先生一人一人、解釈が違うと思います。

私は、素早く全身の運動連鎖を評価できる方法であり、患者さん自身が気づいていない場所の不調を見つけることができる方法=評価の力が優れている技術と認識していますし、他の先生は刺さない鍼でも効果が出せる、鍼灸が怖い人でも安心して受けられる方法であると認識しています。

それぞれに良さがあって、突き詰めていけばもっと良いところがいっぱい出てくると思いますが、現時点での小野の解釈で進化させた終着点として、全身の運動連鎖を正確にピンポイントで評価し、治療すべき場所をまずは明確にする方法としてまとめ上げることに成功した方法がインピンジメントリリースです。

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